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第10回特集:外国人介護士の受け入れで現場はどう変わる? ―基本編

外国人介護士の受け入れで現場はどう変わる?

昨今、外国人介護士の来日の話題がニュースを賑わせています。賛成・反対あらゆる意見が聞こえていますが、なぜ介護業界の人手を海外からの人材に頼ることになったのか? またどのようなプロセスを経て彼らは日本の地を踏むことになったのか? 外国人介護士受け入れについての概要をお伝えします。

外国人介護士の受け入れについて ―基本情報

Q.そもそもなぜ介護労働者を海外から連れてくることになったの?

A.EPAにより日本のニーズと東南アジア諸国の供給がマッチしたためです。

EPA(経済連携協定)とは、従来の貿易のような商品・製品の輸出入のみにとどまらず、人材や知的財産の相互交換、交流などを図り、国家同士の親睦を深め成長につなげようという取り組みです。日本は現在13の国と協定を結んでおり、介護・看護以外にも、製造業、東京オリンピックの決定で需要増となる建設業でも外国人の受け入れが見込まれています。

一方東南アジア諸国では、看護師、介護士、家政婦などの人材育成に早々から取り組んでおり、すでに世界各国で活躍している人も多くいます。介護の人材確保に悩む日本との需給が完全にマッチした結果と言えるでしょう。

Q.具体的にどこの国の人が来るの?

A.インドネシアとフィリピン。そして2014年度からベトナムも参入します。

上記のEPAに基づき、2008年度より、インドネシア・フィリピン両国からこれまで1128人の介護士が来日しています。また今年度よりベトナムも参入することになり、6月に介護福祉士候補生138人が来日しました。候補生は働きながら日本語の習得や介護福祉士の資格取得を目指します。

Q.外国人の技量や仕事への意欲はどうなの?

A.彼らは相当な覚悟を持って来日します。ただし待ち受ける困難が多いのも事実です。

外国人介護士は、母国政府による介護士の認定を受けたうえで来日するわけですから、日本人と比べて技術面で劣ることは考えにくいです。そればかりか、まったく異文化の環境に身を投じるわけですから相当な覚悟があるはずです。

ただし日本に定住して働くには(日本の)介護福祉士試験に合格する必要があります。並行して日本語も自由に使えなければいけないので、やる気や覚悟だけではカバーできない部分も多くあり、日本になじめずすでに帰国してしまった人もいます。そんな彼らを温かく迎え入れ、粘り強く協働していく必要があります。

外国人介護士に立ちはだかる壁

来日から定住して仕事に就くにあたり大きな困難が立ちはだかります。前例のない取り組みだけに各方面が慎重な姿勢を見せ、受け入れ態勢も複雑なものとなっています。

●介護福祉士受験のチャンスは1回のみ。落ちれば即帰国の現実

試験会場

厚労省の合格発表会場の様子(写真提供:Joint)

来日した外国人介護士の最大在留期間は4年間。介護福祉士の受験資格には3年の現場経験を要するため、受験のチャンスは1回きり。落第すれば即帰国の現実が待ち受けています。このような条件の厳しさあってか、政府は外国人受験者に対する緩和措置※も取っていますが、それでも受験者に対するプレッシャーは多大なものでしょう。

※在留期間については、試験における合格基準点の5割以上の得点および受け入れ施設での研修などを条件に1年間の滞在延長を許可。また試験については、試験時間の延長や、漢字のフリガナ併記、語句の一部英語表記なども行われている。

●育成にかかる多大な費用と労力

外国人介護士は(社)国際厚生事業団のあっせんによる雇用契約を結んだうえで介護施設に入所し働くこととなります。つまり同事業団は外国人介護士と日本の施設の仲介役となる位置づけです。しかし実際の受け入れにはいくつかの条件があります。

受け入れ施設の介護職員の一定数が介護福祉士の有資格者であることが求められ、研修責任者にはさらに厳格な条件が求められます。そのうえで日本語研修の実施や宿泊施設の確保、研修の随時報告などがあり、人員に余裕のある施設でなければ受け入れるのは難しいでしょう。

また同事業団や母国の送り出し機関に支払う手数料もあり、不採用だった場合の帰国費用も条件に含まれます。一人前の介護福祉士を育てるのにかかる費用と労力を考えたら、獲得に踏み切れない事業所も多くあるはずです。

外国人介護士受け入れの流れの図

●賛成派・反対派が混在。一枚岩の受け入れ態勢ではない

ここまで説明したとおり、EPAによる外国人介護士の受け入れは政府の方針によるものです、しかし(社)全国老人福祉施設協議会は受け入れを容認しているものの、(社)日本介護福祉士会は受け入れ反対を表明しています。おもな反対理由として「コミュニケーション面から来る介護の質の悪化」を挙げており、日本語能力を大きく問題視しています。そして外国人受け入れの予算を従来の日本人職員の処遇向上に費やすべきだとも主張しています。

介護福祉士会の決起集会の様子

5月24日に開かれた介護福祉士会による決起集会(写真提供:Joint)

しかし少子高齢化の影響で外国人介護士を招いているのは日本の都合だということを忘れてはいけません。大きな不安を抱いて来る彼らに対し、温かく迎え入れてあげる勇気と優しさが必要ではないでしょうか。そして介護の現場がより建設的に、より楽しいものにするため、彼らとの協働を模索していくことが私たち日本人介護士の努めるところではないでしょうか。

次号では続編として、関係者へのインタビューを交え今後を展望していきます。