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第12回特集:どう付き合う!? 年上部下・年下上司

外どう付き合う!? 年上部下・年下上司

自分より年上の後輩の面倒を見たり、新しい職場で年下の先輩に仕事を教えてもらう… なんてシチュエーションは現在ごく当たり前になってきました。ところが年齢や経験のギャップがある年上部下・年下上司を前に、どのようにうまく付き合っていけばいいのか? そんな悩みを抱えている人は多いことだと思います。今号は職場でありがちな具体例を踏まえながら、トラブルやストレスのない職場づくりを模索してみます。

CASE 1 自己流で仕事を進め言う事を聞いてくれない年上部下

自己流で仕事を進め言う事を聞いてくれない年上部下イラスト

新しく入ったAさんは、これまで数社で訪問ヘルパーを勤めるなど介護現場での経験が豊富。おまけにプライベートでは3人の子育てを終え、年老いた母親の日常の介助を行うなどバイタリティ溢れる肝っ玉母さんといった風格だ。そんな頼れるAさんだが、ちょっと職場の輪を乱すようなワンマンなところも見受けられる。職場の先輩として思い切って注意したはいいが、「私はずっとこのやり方でやってきたから!」と言いくるめられてしまった…

いくら経験豊富な人が相手とはいえ、一組織に入って仕事をするわけですから、施設のルールには従ってもらわなくてはいけません。ここで注意を怠れば「あの人だけ特別扱いされている」と他のスタッフの不満を買うことにもなりかねません。

注意したけど聞き入れてもらえない… という人は、一方通行で指示やこちらの要望を伝えるだけになってはいませんか? Aさんがワンマンプレーに走るには何らかの理由があるはずです。そこの部分をヒアリングし原因(理由)を把握するようにしましょう。そこでAさんのやり方が誤りでないのであれば、その内容に共感する姿勢を見せることも大事です。

こういった具合にAさんの本音をうまく引き出してあげるために、普段の何気ない会話などのコミニュケーションを大切にし、必要ならば1対1で面談する機会を設けるなど工夫してはいかがでしょうか? 話し合ってお互い歩み寄る姿勢が打ち出せれば、きっと良好な職場環境が築けるはずです。

Aさん(年上部下)の本音

いきなり注意されたので思わず言い返しちゃったけど、私のやり方もちゃんと理由があってのこと。施設従来のやり方があるのならそれはきちんと教えてほしいわね

職場の先輩(年下上司)の思い

確かにちょっと怖いけど、ハキハキとした性格は利用者さんからも好評だし、Aさんは本当に長く勤めてもらいたい人材なんだよな

まとめ

・こちらの要望を伝えることは大事だが、一方通行にならぬよう相手の意見も必ず聞くようにする。

・「主婦力」は介護の現場で大きな力になる。経験で敵わないところは素直に相手を認め、ときには相手に教えてもらう姿勢を見せよう。

現役介護士が語る年上部下実体験
Xさん 35歳・男性 デイサービス施設長

「自分の母親くらいの人たちですから、『目上の方』という意識はあり、言葉使いや対応に気苦労しましたね。お客さんへのサービスの提供方法で議論になったことがあり、そのときは相手の要求を把握しその内容も踏まえたうえで、施設長という立場からどのように施設運営をしていくのかを明確にして理解を広めていきました。

『年上の部下』に関して言えば、女性同士の方が難しい気がします。前の施設で働いていた当時、施設長で同年代の女性がいたのですが、年上の女性部下に対し色々と提案していたところ聞き入れてもらえず、自分の娘くらいの年齢だということで、ナメられていたように見えました。一方で男性の場合は、縦社会に慣れているせいか男性同士で険悪になるケースというのがあまりないように感じます」

CASE2 横柄な言葉使いと態度の年下上司についイラッとする

横柄な言葉使いと態度の年下上司についイラッとするイラスト

Bさんは脱サラして40代後半で介護の世界に飛び込んだ。奥さんと受験を控えた子どももいるため早く一人前になって管理職に就き安定した収入を得たい。しかし研修期間で下についた、自分の子どもほど歳の離れた先輩の態度と言葉使いが非常に横柄。社会人としてのプライドが邪魔をしてどうしてもストレスを日々感じるようになっていく…

基本的に人生の先輩に対しては敬語を使うべきでしょう。しかしそれを無作法な年下上司に分かってもらうのは至難の業です。

ここで一つ大きな問題になる得るのは、悪い環境でBさんの気持ちがすさむようになると、Bさん自身の言葉使いや態度にも悪影響を及ぼします。何を言われても口答え。次第に軽蔑する年下上司の言う事を聞かなくなるようになり、職場全体の士気が下がります。さらにその態度が他の職員、利用者へ伝播してしまうようではもう手遅れです。

ここは一つ「自分は人生の先輩だから」と余裕を見せ、どんなに生意気な年下相手でも敬語を使う姿勢を貫きましょう。年齢や職歴に関係なく敬語で話すことを心がければ、きっと相手もBさんの真摯な姿勢を理解し改めてくれることです。また言葉使いや勤務態度から仕事への熱意が他の職員に伝われば、早く重要なポストを任されることも考えられます。

Bさん(年上部下)の思い

なんで息子ほどの歳のヤツからタメ口叩かれなきゃならんのだ

職場の先輩(年下上司)の本音

いくら年上でも新人だし、しっかり教育しなきゃ俺が怒られちゃうからなぁ。やっぱナメられたくないし言う事はきちんと言わなきゃダメだよなぁ

まとめ

・どんな先輩が相手でも、仕事を教えてもらうことへの感謝を忘れてはいけない。

・仕事に対する真摯な姿勢、態度は必ず誰かが見ている。そして評価してくれる。

現役介護士が語る年下上司実体験
Yさん 58歳・男性 小規模多機能型居宅相談員

「自動車業界から転職し46歳のときに介護の世界に飛び込みました。初めに入社した施設では、年下上司が私に気を遣って指導しているのがわかったのでこちらも申し訳なく感じていました。お互い変な気遣いばかりで質問もうまく切り出せず、業務全体の流れが理解できるまで結構な時間のロスだったんじゃないかなと今となっては思います。

また今までの経験を振り返ると『上司は何処を見て仕事をしているのか?』と疑問を持ちます。デスクワークばかり力を入れ、指導ではなく評論家的発言が目立ちます。これからはケアの質が問われる時代に入って行くと感じています。既存のやり方や概念に固執し続け、新風を嫌う上司の時代はもう過去の話。これからは年齢に関係なく誰からも頼られて、実践力もあるリーダーの出現を期待しています」

CASE3 怠慢が目立ってきた年上部下を注意する

怠慢が目立ってきた年上部下を注意する

半年前に入社した自分より一回り以上年上のCさん。明るく朗らかな人柄で仕事を覚えるのも早い。しかし仕事に慣れてきたせいか最近遅刻が目立つようになってきた。また朝礼のときに大きくあくびをしたり人の話を聞いていないのではと思うときがある。人当たりが良いとは思っていたけど、実はかなりテキトーな性格なのではないか。大きなミスにつながっては困るので、ここは思い切ってCさんに注意することに…

この場合、絶対にやってはいけないのが怒鳴りつけるなど頭ごなしに叱ることです。もしあなたが感情的な態度を取った場合、Cさんは注意されている内容よりも、高圧的な態度で接してくることへの反感で頭がいっぱいになります。さらにその場で言い争いになり収拾がつかなくなることも考えられます。

ここで「Cさんははダメだ」と決めつけることや「何としてでもCさんの態度を改めてやる」という考えは傲慢です。まずは自分から変わること。Cさんにわかってほしいことがあるのならば、叱る以前に自ら率先して行動に移していくことが大事です。

またCさんがミスをしてしまいどうしても叱らなくてはならない場合、注意したいのが「直後に」「こちらから出向く」「口頭で」の3原則です。文書と面等向かって注意されるのとでは説得力が違います。また何かのついでに注意すれば、相手にとっても記憶が曖昧になりうまく伝わりません。

Cさん(年上部下)の本音

まあ若い上司だし、変に波風立てずにうまくやろうと思っていただけなんだけどね。でもちゃんと注意してくれなければ気づかないこともあるよ

職場の先輩(年下上司)の思い

人柄が良いことは十分に評価している。でも自分勝手にやられては他の職員に示しがつかない。施設の規則を守ったうえでの個性でなくてはいけない

まとめ

・相手に変わってほしければ、まずは自分から。

・注意の3原則、「直後に」「こちらから出向く」「口頭で」。

Column

終身雇用は昔の話。転職・中途採用が当たり前の世の中に

戦後以降日本では、学校卒業と同時に就職した会社で定年まで働くのが当たり前の世の中だった。しかし不景気によるリストラや大手上場企業の倒産などもあり、つい数十年前までの常識はいとも簡単に崩れた。小泉政権以降増えた非正規雇用の増加も原因の一つだ。

現在はあらゆる職種で年齢、性別、国籍を越えたチームづくりがなされてきている。転職、中途採用が増えつつある今(グラフ参照)、一つの仕事を勤続している人を重用することも大事だが、他業種で培ったさまざまな経験やスキルを持った人材を評価し、戦力として育てていくことが今後責任者、管理者には求められるだろう。

文/大西啓介 執筆協力/長澤郁夫 片野嘉樹 イラスト/渡辺貴博
参考文献/『どんな年上部下でも一緒に働きたくなる上司のルール』浜村友和著、青春出版 ほか