トップページ > 特集:ペットの高齢化を考える

特集:ペットの高齢化を考える

ペットの高齢化を考える

長寿大国日本。医療や福祉の発展、食糧事情の改善によって、日本国民の平均寿命は男女ともに80歳を超えるまでになりました。しかし寿命が延びたのは人間だけに限った話ではありません。私たちと生活を共にする犬や猫といったペットたちの寿命も延びてきており、高齢ペットたちのケアの問題に直面する飼い主が増えているのです。今回は、病気や寝たきりを防ぐための老犬飼育における注意点をご紹介するとともに、飼い主・ペット両者にとって幸せな老後を過ごすために必要なものは何か? 都内を中心にペットシッティングサービスを展開する株式会社CARE PETSにお話を伺いました。

ペットの平均寿命は延びている!

一般的な日本犬の場合、かつてその寿命は10年前後程度でしたが、伝染病などの予防接種が徹底され衛生面が大きく改善されたほか、栄養価の高いペットフードの登場などによって、その寿命は延びてきました。

犬の場合、大型犬は小型犬に比べると短命の傾向にあり、猫の場合、室内飼育より屋外飼育の方が短命になる傾向があります。一般社団法人ペットフード協会の最新資料(2016年)によると、全国で飼育されている犬全体の平均寿命は14.36歳。猫全体では15.04歳にのぼります。

犬の平均寿命推移

グラフ/犬の平均寿命推移 出典:日本獣医師会雑誌「家庭動物(犬猫)の高齢化対策(須田沖夫2011年)」を元に作成

ペットが見舞われる病気。実は人間と大差ナシ?

ペットの寿命が延びるのは、飼い主からしたら喜ばしいことであるのは間違いありません。しかし、高齢化とともにあらゆる病気にかかったり、思わぬ体調不良に陥ったりするリスクも高まります。

さまざまな症状の中には激しい痛みを伴う異常も少なくありません。しかし動物は口をきけないことから、病気の発見が遅れて病院へ連れていったときにはすでに手遅れということも考えられます。飼い主が少しでも異常を感じたら、すみやかにかかりつけの動物病院へ行き診察を受けることが大切です。同時に、ペットが若いうちから健康管理に気を配り、病気やケガの予防に努めることも大切です。

部位 主な病名 備考
消化器系

すい炎、腸閉塞、そけいヘルニア

そけいヘルニアに関しては、交通事故などの後遺症によって発症するケースが多い

呼吸器系

気管虚脱

小型犬に多く見られる

腎臓・泌尿器系

頻尿、乏尿、尿路結石

人間と異なり、メスの犬、猫にも頻発する

緑内障、白内障

歯周病、虫歯

骨・関節系

椎間板ヘルニア

胴の長いミニチュアダックス、コーギーといった犬種によく見られる

水頭症、てんかん

脳(痴呆症状)

犬の認知症

徘徊、夜泣き、失禁、同じ場所をグルグル回り続けるといった症状が見られる

その他

悪性腫瘍(がん)

DSC_0380

視覚障害を患っているトイプードル。もともと繁殖犬として飼われ、捨てられていたところを保護された経歴がある。鼻周辺の部分の脱毛は、脱走しようと鼻の頭の部分をしきりにケージにぶつけ続けた結果抜け落ちたと見られる。

犬の介護も人間同様家族の大きな負担となる

老犬、老猫のケアも飼い主の役目ですが、どのような状況が想定され、実際にどのようなケアが求められるのでしょうか? 実際に高齢犬と生活し、看取った家族の経験談をまとめてみました。

脚力が衰えた場合

杖をついている犬

●想定される状況

特に後足で体重を支えることが難しくなります。外出(散歩)が難しくなりほぼ1日中寝たきり生活となります。

●家族への影響

散歩に行けないため、自宅内での食事・排せつの介助となります。 この衛生面や臭いの問題が出てきます。 同時に定期的な体位変換が必要となります。 特に大型犬の場合、体重があることから注意しなくてはいけませんが、家族の肉体的な負担も大きくなります。

●予防法・ケアの注意点

寝たきりの状態が続けば、両脚の付け根、あごの部分などに褥瘡が見られるようになるため、24時間体制での体位変換が必要になります。 少しでも負担を減らせるように、寝床の下に低反発素材のマットなどを敷くようにしましょう。

常時の食事・排せつ介助も必要となります。歯が弱くなっていることも考えられるので、ドライフードを水で軟らかくするなど工夫してみましょう。

また散歩に行けなくなったことで、これまで歩行によって適度に削れていた爪の伸びが目立つようになります。

伸びた爪を放置しておくと、巻き爪のような状態になって体に食い込むこともあるため、犬用の爪切りを用いて定期的に切る必要があります。

歯が衰えた場合

歯の衰え

●想定される状況

歯槽膿漏に代表されるように、歯と歯茎が劣化します。 歯を支える歯茎が劣化すれば、歯が抜け落ち、硬い食べ物を噛みちぎったり、噛み砕いたりすることができなくなり食事が制限されます。 また口内の雑菌が体内に入り込み、ほかの病気を併発する恐れもあります。

●家族への影響

歯周病をともなう場合、口臭が非常に目立つようになります。この口臭が、歯周病発見の第一歩になると言われています。

●予防法・ケアの注意点

人間と同じように子犬のころから歯みがきをする習慣をつけておけば幾分予防できます。成犬になってから歯みがきの習慣をつけるのは難しいため、早いうちに始めのがコツです。

症状が進行した場合、手術で歯垢、歯石を除去することができます。しかし高齢犬の場合、麻酔に耐えられる体力があることが絶対条件になります。

痴呆症状(認知症)が見られる場合

痴呆が見られる犬

●想定される状況

飼い主が呼びかけてもボーっとしていて無反応なこともあれば、逆に人が近寄っただけでも急に吠え出すといった様子が見られるほか、失禁する、犬小屋から出られなくなる、その場をグルグルと回り始めるといった症状(旋回運動)が見られるようになります。

てんかんなど脳が原因による疾患を機に見られるようになりますが、おもに高齢犬に見られる、人間で言う「認知症」の症状です。

●家族への影響

不審者がいるわけでもないのに、夜通し吠えるといった行為が見られるようになります。家族だけでなく近所の安眠も妨げることになるので早い対策が必要です。またこれまで大人しかった犬が、人が近寄っただけでも急に活発に吠えるようになるといったことも見られるようになります。室内や庭先で失禁する、嘔吐することもあります。

●予防法・ケアの注意点

高齢犬向けに栄養配分が調整されたドッグフードを早い段階で与えることは予防につながり、症状が出たとしても、動物病院で処方される薬物で症状を緩和することもできます。

  

旋回運動など活発な動きが見られる場合、そのまま放置すれば、夜は疲れでぐっすり眠ってしまうこともあるため、周囲に迷惑がかからない程度に自由にさせておくことも対処法の一つです。

18年間生きた我が家の犬を看取る

主婦Oさんからの寄稿

次男がまだ幼稚園に通っていたころ、幼稚園の友だちが拾ってきた子犬を我が家で引き取ることになりました。あっという間に月日が経ち、最後は後足の自由が完全に効かなくなり、11か月におよぶ寝たきりの介護をして本当に辛い思いでいっぱいでした。

寒い夜はこたつで添い寝して、切ない鳴き方のたびに「よしよし」となだめましたが、その声が幻聴になり、こちらも寝られない日々が続きました。獣医さんからは「あなたがダメになっちゃうから」と言われ、数日間病院で預かってもらったりもしました。主人は「病院の金儲けだ」と言っていたけど、楽になったのは事実です。獣医さんは、決して安楽死とは提案しませんでした。それをすると死んだあと責任転嫁するからではないでしょうか。犬友に会って、道で大泣きしたこともありました。

旅立つその日の夜、抱っこしておしっこをさせようとしたとき、何時も振らないしっぽをパタパタさせて、その直後、私の腕の中で息を引き取りました。自分の死に目がわかっていたみたいでした。なかなか外に行けず、ずっとおしっこを我慢していたのでしょうか。そのまま漏らして辺りがビチャビチャになりました。

それから犬は絶対に飼わないと決めていたのですが、今は譲渡会でもらった犬と暮らしています。二度と辛い思いをするのが嫌だったはずですが不思議なものですね(談)。

←Part2へ