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押さえておきたい現場の常識

ここは高齢者施設「フレンドハウス」。元気だけが取り柄の新人ワカコちゃんは毎日が失敗の繰り返し…… それでも先輩職員マツオカさんの教えを受けながら日々研さんを重ねていきます。ついうっかり忘れがちな、介護の現場におけるさまざまな仕組みや法令などをワカコちゃんと一緒におさらいしていきましょう。

第7回 職場のLGBT

最近オネエ系芸能人ってよくテレビで見ますよね。ああいう人たちってなんで男らしくしないんだろうって思っちゃう。理解できないなぁ。

実は日本の人口の5~7%の人はセクシャルマイノリティと言われる「LGBT※」に該当するというデータがあるんだよ。大体20人に1人の割合だ。まあテレビに出ている芸能人はある程度キャラを作っている可能性もあるけどね。

えっ、そんなに多いんですか!? 学校のクラスに1~2人はそういった人たちがいる計算になりますよね?

欧米ではLGBTの存在がさらにオープンになっていて、映画スターやスポーツ選手が同性愛者であることを公表している人も少なくないよね。一般社会においても同様で、大企業はLGBTに対する差別撤廃を社内規定に掲げていたり、就職、昇進、福利厚生面でも差別のないように配慮されている①んだ。

確かに、私も好きになった人がいてその人が同性だったとしても、それを周囲から否定されたら辛いなぁ。一人ひとりの個性や違いを理解できる人にならなくちゃ。

LGBTのことに理解のある人を「アライ(=支援者)」というんだよ。一緒にゲイパレードに参加してたりもするよね。いずれにしろ介護の職場は新卒ばかりでなく中途採用の人も多いし、年齢、性別もバラバラ。だからこそダイバーシティ(多様性)②を認められるようでないと人間関係も円滑にならないと思うね。

フレンドハウスにLGBTの職員がいるかはわからないけど、傷つけてしまうような発言は慎まなきゃいけませんね。

周囲の理解があったとしても現実的に付きまとう問題③もあるよね。普段友だち同士でするような何気ない会話で傷つくこともあるだろうし、トイレ、更衣室の問題もある。施設を利用する高齢者の中にもLGBTに対する嫌悪感を露骨に表す人もいるだろうし。企業の規模を問わず、今後は社会全体で考えていくべきテーマでもあるんだ。

もう「男らしく、女らしく」という時代ではないということですね! ワタシも大食いなので食事のときいつもジロジロ見られていたけど、明日から人目を気にせず堂々と食べることにしました!

君ほどの大食いは20人に1人どころじゃないな… お弁当を毎日作ってくれる君のお母さんも立派なアライだよ。

※LGBT…レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシャル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字から取った造語で、同性愛者、両性愛者、性自認ができない性別越境者などを指します

解説

① 企業による差別撤廃の声明

現在多くの企業がLGBTに対する差別撤廃を社内規定に掲げ、福利厚生面での均整化を図ったり、全社員に対して普及啓発教育を行うなどの取り組みが見られます。有名なところでSONY、日本IBM、ゴールドマン・サックス証券、野村証券、GAPといった企業が何らかの施策を導入しています。差別撤廃をきちんと明文化することで、安心して自分らしく生き生きと働ける職場環境の基盤が形成されます。

外資系企業が積極的に行っている反面、日本の企業はやや遅れをとっている点は否めません。また外資系企業は会社のトップが差別撤廃のメッセージを発信して大々的にキャンペーンを打っているのに対し、日本の企業は人事部による個別の対応(ホットラインなどの電話相談)に注力している傾向が強いと言えます。

② ダイバーシティ

ダイバーシティ(Diversity)は“多様性”という意味を持つ言葉です。人間は誰しもが他人とどこかが違うはずです。その違いを認め尊重できる風土づくりが求められています。決してLGBTだけにとどまらず、国籍や宗教の違い、障がい者に対する理解なども含まれます。ダイバーティへの理解は他人に対する思いやりとも言えますが、職場環境が円滑になることで、結局は自分自身にとってもストレスフリーでいられる環境がもたらされるのです。

③ 介護の現場におけるLGBT問題

更衣室やトイレの利用で男女どちらを使うべきかといった問題はたびたび議論になります。本人の意思を尊重して決めることは大事ですが、それによって他者が不快感を示すようでは真の意味での平等ではありません。個室型で対応していくのがベストかもしれませんが、設備面での改修には限界がありなかなか難しい問題です。

見た目が男性の人に対して、「体力がありそうだから…」といった先入観で夜勤や残業を優先的に押し付けてしまうのもNGです。

また施設を利用する高齢者は世代的に男女分業、「男は男らしく、女は女らしく」といった概念が強い傾向があります。恋愛結婚よりも親同士が決めた相手と結婚する風習が強かった時代を生きてきたこともあり、性に対する価値観も現在とは大分異なります。当然LGBTに対する理解も薄く、思わぬ一言で職員を傷つけてしまう可能性もあります。ストレスを抱えないよう「世代的な価値観の違い」と割り切る気持ちも必要です。  

監修/リブアップワーカー編集部 キャラクターデザイン/Yocico Momose

参考文献/『職場のLGBT読本』柳沢正和、村木真紀、 後藤純一著、実務教育出版 ほか

キャラクター

ワカコちゃん

●ワカコちゃん

大好きだった祖母の死をきっかけに介護の世界に入ることを決意。まだまだ未熟だけど元気で明るくいつもみんなの人気者。趣味はお菓子づくりと昼寝と愛犬トイ・プードル「キクエ」の散歩。祖母と同じ名前を犬に付けたため家族からは大ヒンシュクを買っている。

マツオカさん

●マツオカさん

「フレンドハウス」のケアマネージャー。ワカコちゃん直属の上司で、福祉に関する法律を熟知しており周囲からの信頼も厚い。趣味はスキーとバンド演奏(キーボード)。仕事熱心だが、毎年サザンの年越しライブに行くため大みそかの勤務は頑なに拒んでいるとか。