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現場で使える!今昔百科事典

歴史、文化、流行などを今に紹介する「今昔百科事典」。現場で利用者たちとの共通の話題づくりに役立ててほしい

トラックドライバー

トラックドライバーイメージ

昨年末、高倉健、菅原文太という昭和を彩った映画スターが相次いで亡くなりました。今回の今昔百科事典では、菅原文太の代表作のひとつ『トラック野郎』シリーズにちなんで、長距離大型トラックドライバーの実情に触れてみたいと思います。

Trivia

過酷な勤務環境の長距離ドライバー

トラック車内

運転席後部にある仮眠スペース。大人1人真横になれるほどの空間がある。

幹線道路を一目見れば、大型トラックがひっきりなしに24時間休みなく走り続けているのがわかります。これら長距離ドライバーの勤務環境はどのようなものなのでしょうか?

運転手2名体制の長距離観光バスとは異なり、どんなに長距離になろうとも運転手は1人で目的地まで走らなくてはいけません。厚生労働省労働基準局はドライバーの1日の拘束時間は13時間以内(最長でも16時間、荷物の積み下ろし時間等も含まれる)と定めていますが、道路の混雑状況などをふまえると、必ずしも法定拘束時間内に仕事が終わる保証はありません。

また長時間同じ姿勢をとるため、腰痛や痔になるドライバーも多いようです。トイレに行きたくなった場合や休憩を取るときにもトラックを駐車するスペースを確保しなければならず、見つからない場合は延々とハンドルを握り続けなくてはいけないのです。

そんなドライバーたちの楽しみは、運転中の仲間同士で楽しむ無線の会話。音楽やラジオを聴くより単調になることがなく、眠気覚ましにもちょうどいいそうです。

History

石原元都知事に烙印を押されたディーゼル車の復権

トラックやバスなど大型車の燃料はほぼ100%軽油(ディーゼル)が使われています。なぜ一般自動車と同じガソリンを使わないのでしょうか? 答えは簡単で、燃料費が安いから。リッター価格でガソリン(レギュラー)より平均20~30円ほど安価なのです。

しかし1999年(平成11)、石原慎太郎元東京都知事が、ディーゼル車が排出する黒煙と窒素酸化物の人体や環境への悪影響を懸念して、ディーゼル車使用の規制をかける方針を打ち出しました。これにより一気に“環境を害する悪者”として位置づけられてしまい、各メーカーとも新車を製造できない時代がしばらく続きました。

すっかり地に堕ちたディーゼル車ですが、実際のところ地球温暖化の原因となるCO2排出量はガソリン車の方がはるかに多く、欧州ではかねてからディーゼル車の優位性が認められ、環境負荷の少ないディーゼルエンジンの開発が続けられていました。その結果欧州では一般乗用車にもディーゼル車は普及し、今や約半数の自動車がディーゼル車になろうとしている状況なのです。

近年日本でも、エンジニアのたゆまぬ努力により、燃料噴射システムに改良を加えた「クリーンディーゼル」エンジン車が普及し、一部の自動車メーカーの主力商品になりつつあります。黒煙を出すこともなく音も静か。省CO2で燃費も良いクリーンディーゼル車は、ハイブリッドカーと並び今後一層の普及が見込まれます。

Keyword

「トラックドライバー2015年問題」

道路

介護でも人材不足が叫ばれていますが、運輸業界でも人材確保は喫緊の課題となっているようです。国土交通省は2008年に「物流業界の労働力確保対策に関する試算」を発表し、「2015年に全国でトラックドライバーが14万人不足する」と公言しました。

人材不足の一番の原因は、給与の低下による離職率の増加です。これは原油高によるコスト増、そして規制緩和により新規参入事業者が増えたため、極度の価格競争が生じ、結果として現場のドライバーにしわ寄せが来てしまいました。「他にもっと給与のいい仕事がある」と、特に若い世代の離職が目立ったようです。比較的転職が難しい50代以上のベテランドライバーは残りましたが、今度は一斉定年退職の問題も出てくることでしょう。

東日本大震災の直後、商店の棚から商品が一斉に消えたことは記憶に新しいと思いますが、物流が絶たれることによって起こる不便を、私たちはすでに痛感しているのではないでしょうか。このままでは私たちの生活にどんな影響を与えるのか、少し真剣に考えてみてもいいかもしれません。